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(2015.10.28_中日新聞、東京新聞)

掛川出身・森さん監督「種まきうさぎ」上映

◆フクシマと向き合って

東京電力福島第一原発事故と向き合う福島県出身の若者らの姿を描いたドキュメンタリー映画「種まきうさぎ フクシマに向き合う青春」の上映が、東京都中野区のポレポレ東中野で始まった。事故当時、福島に暮らしていた高校生たちが故郷を思い、生きる道をどう選んでいくかを記録した映画。第五福竜丸が被ばくしたビキニ事件を調べる高知県の高校生たちの映画も三十年前に撮った森康行監督(65)=掛川市出身=は「見る人が、自分は福島の人たちとどうつながれるかを考える映画にしたかった」と語る。

「種まきうさぎ」は、原発事故の影響を伝えようと、福島県の女子高生四人が二〇一一年に作った朗読グループの名。雪解けの季節、地元の山肌に表れるウサギの形から名を取った。

映画は四人のその後を追う。一三年にはメンバーを広げ、福島高校生平和ゼミナールを結成。東京や静岡、高知の高校生たちに「皆が県外に出ちゃって焦ってる」「友達と会えないのがつらい」と本音を漏らし、福島だからと敬遠せず「普通に接してもらえるとうれしい」と語る。

四人は高校を卒業し、一人は昨春、ビキニ事件六十周年を迎えたマーシャル諸島を訪れて現地の人たちと触れ合った。震災後から今春までに彼女たちが出会った福島の農家や漁師、高校生、福島を訪れた若者らも登場する。

誰か一人が主人公ではない。森監督が願うように「人と人はどうつながり、支え合っていくのか。自分ならどう入っていけるだろう」と見る人に自問を促す内容になっている

高校生平和ゼミナールは全国各地にあり、高校生が学校の枠を超えて主体的に学ぶ場。初日二十四日のトークイベントでは、東京高校生平和ゼミナールの一人、和光高三年若林一輝君(17)が森監督と対談した。

活動で震災被災地や広島、沖縄を訪れている若林君は「皆それぞれの場で問題を抱え、解決方法も分からない。でも知らないと何も始まらないからゼミをやっている」と語った。高校生同士なら、しがらみもなく素直に気持ちを話し合えると感じる。「具体的な解決策は分からなくても、どうしていきたいかは話せる。理想論かもしれないが、希望を持ちたい」と願う。

上映は十一月十三日まで。福島市のフォーラム福島でも十月三十日まで上映中。全国でも順次公開予定。(神谷円香

http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20151028/CK2015102802000096.html