学び つながり 支えあう

 

早春、福島に桜の花が乱れ咲き桃、梨、りんごも次々と花咲く頃、

山の積雪も解け始め、吾妻小富士の山腹に真っ白な

「種まきうさぎ」と呼ばれる雪渓が現れます。

 

昔から地元の農民はこの「うさぎ」を見ることによって春の訪れを知り、苗代に種まきを始めたといわれています。

福島では、この「種まきうさぎを」見ることで、厳しく長い冬を乗り切り、

いのちが開花する春をむかえる季節がやってきたことを感じます。

 

2011年3月11日三陸沿岸を襲った未曾有の大災害。

 

地震・津波による被害は天災として位置づけられ、人々の深い傷跡も年月とともに少しずつ乗り越えられ、

復興にむけて歩み始めているかのようにみえます。

しかし、福島第一原発の事故による被災は今も続いています。

原子炉のメルトダウンによって放出された「死の灰」は、森、田畑、都市に降り注いで大地を汚し、

その一部は川をつたって海に流れ込み続けています。

 

帰還困難区域の浪江町の隣、小高地区。

 

海岸部は20mの津波が押し寄せ、高さ15メートルの杉の木は最上部まで枯れ、

少し入った田んぼには津波で流されてきた自動車やトラック、コンテナが横たわり、

運び出された瓦礫の山がそこかしこに行くあてもなく積まれ、倒壊した家も散見されます。

市街地に入る。陽光を浴びた家々が日常の姿を見せて建っています。

しかし、街中には人1人いない。──無人の町。


学校の校庭は草で覆われ、人もいなければ音も聞こえない死の町。

高台には痩せこけた牛が放牧されている。放射能を調べるための実験飼育だという。

ここに住んでいた人たちは語る「先の全く見えない生活ほど苦しいものはない」。

小高地区に入って線量の最高値は毎時7マイクロシーベルト。国の定めた年間積算量1ミリシーベルトの60倍以上。

人間が暮らせるところではない。更に、セシウムは地中に沈殿していくと言います。

 

セシウム137は半減期30年、60年で4分の1になりますが、

60年という時間は子ども達のこれからの一生に当たる年月です。

 

低レベル放射線にさらされ続ける子どもたちの内部被曝問題は、子ども達自身が当事者として、

向き合わざるをえない重い課題として突きつけられているのです。

 


そうした中で、自分たちの足もとから放射線被災を、

原発問題を考えようとする高校生たちのグループ・

福島高校生平和ゼミナールが生まれました。

 

高校生は語ります「福島県民であることだけで差別される」

「私は将来結婚できるのだろうか?」「無事に子どもを産むことができるのだろか?」

高校生たちは大きな不安を抱えながら、自ら足もとを見つめることでフクシマに立ち向かおうとしています。

 

自分たちをとりまく放射能とはどういうものか―通学路の線量測定をおこなったり、

放射線被災の専門医を訪ねて自ら抱えている恐怖や不安について語り学んでいきます。

そして、仮設住宅に住む被災者を訪れ、自分たちの受けた苦しみと共感しあいながら

1ミリでも前に進むために高校生たちは考えます。


さらに、フクシマにとどまり放射能と闘い、新しい農産物を生み出そうとしている農民たちや漁業者に出会い、

家庭・学校・地域・社会と自身の結び付きに目を向けていきます。

 

その中で高校生たちはきっと自分の生き方を見つめ直していくことでしょう。

 

なぜなら、そこには、いまだかってない苦難を乗り越えようと

頑張っている若い農民や漁民の青春があり、

被災後の新しい人とのかかわりを作ろうとしている

大人たちとの出会いが待っているからです。

 

更に、高校生たちのひたむきさは人と人を結び、大人たちをより励ますにちがいありません。

 

自分たちの足もとを見つめ直し始めた高校生、大学生など

青年たちの思いや行動を通じて、日本中の親や教師や社会人が

「フクシマとともに日本の新しい春を迎える準備」をしなければなりません。

 

私たちは、福島の高校生たちの平和ゼミ、その中の朗読サークル「たねまきうさぎ」が、

自身を取り巻く放射線被災を見つめながら、学校の枠から1歩踏み出して、福島の同じ高校生たちと交流し、

そして核被災問題に向き合う高知・静岡・東京など全国の高校生や現地の人々とともに歩む姿を記録していきます。

同時にフクシマの今をリアルに伝え、私たち自らの問題として

フクシマの人々とともに育ち合う映画を作ろうと決意」しました。

 

吾妻小富士の「種まきうさぎ」が苗代に種をまくことを告げるように、

この映画が「平和の種」をまきながらネットワークを

全国に広げていくことを願い企画されました。

 

吹きやまぬ風の中を「フクシマに向き合う青年」とともに歩む

「平和のたねまき人」を募集します。

 

私たちはこの映画を皆様からの浄財によって手作りの映画として、製作をすすめようとしています。

 

放射能によって、ふる里を追われた人、避難したくても避難できない人、

福島をすこしでも人が住めるところにしようと努力している人。

そして何よりも放射能被害が今後最も心配される子どもたちに私たちは何ができるのか、

ビキニ事件を28年間にわたって調べてきた山下正寿。


チェルノブイリ原発事故のその後を描いてきた森康行がその教訓から総力をあげて、

福島から学び、フクシマを自分自身のこととして捉え、お互いがよりよい社会と暮らしを築くための学び合い、

育ち合いの映画にしたいと決意しています。

 

の映画に対する全国の皆様の物心両面にわたる支援をこころから呼びかけます。

監督:森 康行

製作・著作:種まきうさぎ製作委員会

企画:山下 正寿・斎籐 毅

撮影:野間 健・西島房宏・川越道彦

マーシャル諸島撮影:藍原寛子(Japan Perspective News)

音楽:浦木 正志

編集:古賀 陽一

音響効果:八重樫 健二

運営:松崎頼行・吉田正美

 

種まきうさぎ製作委員会

澤田 明治/浦木 正志/吉田 正美/藤森 瑞樹